相続手続の際に、各金融機関や法務局へ提出する遺産分割協議書には、相続人全員の印鑑証明書の添付を求められるのが一般的です。ところが、刑務所に入所している相続人は印鑑証明書の交付を受けることが難しい状況です。このような場合は、どうすればよいのでしょうか。

結論から言いますと、各金融機関や法務局等の相続手続をする窓口で事前に相談するしかないです。

金融機関は各金融機関ごとに内部規定があるでしょうから、一つの金融機関がOKだからといって、同じ方法で他の金融機関も手続きをとれると思わずに、全ての金融機関で個別に確認をするべきでしょう。

一方、法務局の場合も事前相談は必須ですが、以下の不動産登記先例が参考になります。

「刑務所在監者が登記義務者として印鑑証明書を提出できない場合には、本人の拇印である旨を刑務所長又は刑務支所長が奥書証明した委任状を添付すべきである。」
(昭和39年2月27日民事甲第423号)

これは、不動産の売主等のいわゆる登記義務者が刑務所在監者の場合ですが、これを根拠に法務局に、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書のかわりに「本人の拇印」+「刑務所長の奥書証明」で手続きをとれるよう相談してみるのが良いと思います。また、金融機関等も同様の方法での手続に応じてもらえれば、手間も少なくて済みますので、交渉をするメリットはあるでしょう。

登場人物A

以前取り扱った案件では、上記のとおり、在監中の相続人の印鑑証明書のかわりに「本人の拇印」+「刑務所長の奥書証明」で、無事手続きを終えることが出来ました。